算数の勉強をするとき、ふつうは、1問ずつ勉強するでしょう。
たとえば、規則性の問題を勉強するときには、次のような手順になります。
まず、小問(1)では、問題文の指定どおりに、数を書き出し、問題文の意味をとります。
小問(2)では、書き出した数にどのような規則性があるか、見抜きます。
小問(3)では、実際に書き出すことなく、規則性に基づいて、計算で答えを求めます。
多くの人は、この問題について、ここで勉強は終了し、「はい。次っ」となります。
ところが、優秀な人の場合、必ずしもそうではありません。
「そのような規則性が生じるのは、どうして?」
という部分が気になります。
その理由がわからない限り、規則性がどこまでも続く保証がなく、本当の意味で(3)が解けたことにはならないからです。
そこで、規則性が生じる理由を、納得いくまで追究することになります。
完璧主義ですね。
これは、算数の学力をつけるのに、とても有効な方法です。
それどころか、規則性が生じる理由をきちんと説明できない限り、本当の意味で勉強したとは言えません。
将来、算数(数学)を全く使わない職業に就く、と固く心に決めている人は、まあいいかもしれません。
でも、我こそは!という人ならば、ここをおろそかにしてはいけません。
さて、このような「算数魂」を持った子が、算数のテストで規則性の問題を解くと、どうなるでしょうか?
「規則性は見抜いた。でも、なぜそのような規則性が生じるのか気になる。」
「う~ん、これがわからない限り、この問題が解けたことにはならないな」
納得がいくまで、考え続けることになります。
わからないまま、次の問題に進む、などということは、気持ち悪くてとてもできません。
だいたい、我こそは!という算数少年少女にとっては、捨て問の存在を認めることさえ、難しいのです。
このような時の時間というのは、ふだんの10倍くらい速く進んでいます。
さらにいけないのは、規則性が生じるメカニズムを理解できなかった原因を考えはじめ、テスト中にもかかわらず、日頃の勉強を反省し、その後の勉強計画まで立ててしまうこと。
今、何の時間ですか?
テスト中ですよ!
わかってはいても、それだけくやしいわけです。
結果、時間配分はメチャクチャ。
その子の能力が点数に反映しているとは、とてもいえない、という状況になります。
でも、ここで受験生は、ふだんの勉強の際に良いとされる態度が、テスト中には悪となる場合があることを、理解しなければなりません。
テストというのは、制限時間内に得点を最大化するゲームなのです。
学力ではなく、得点力を競っているのです。
得点の最大化主義です。
意外かもしれませんが、入試において、学力は、得点力をアップする手段の一つにすぎません。
最も有効な手段ですが、あくまでも手段の一つにすぎません。
ですから、規則性が生じる理由がわからなくても、とりあえず先に進む必要があります。
では、どうやってモヤモヤを振り払い、先へ進めばよいのでしょうか?
「気持ちの持っていき方」
について、お話します。
テスト(入学試験)の問題は、大問で4問~6問ぐらい出題されることが多いでしょう。
でも、これを4~6問ととらえるのは、実はあまり良いことではありません。
「全体で1問」
と、とらえるべきです。
なぜなら、出題者が全体を通じて、受験生の資質を試そうと考えているからです。
「解けない問題をそのままにして、集中力を乱されることなく、気持ちを切り替え、次の問題に取り組めるか?」
ということも、明らかに問われています。
それぞれの大問小問が、目的をもって、配置、編集されています。
1問にこだわり過ぎる子は、気持ちの切り替えができない人、あるいは、危機管理能力に欠ける人、という評価になります。
世の中には、解答のない問題がいくらでもあります。
解答がないまま、その状態に耐える必要もあるでしょう。
同時に複数の問題を扱わなければならない場面もあります。
数学者だって、研究テーマが一つだけ、というわけにはいかないかもしれません。
これは、一生をかけて研究するテーマ。
これは、今月中に提出しなければならない論文のテーマ。
一生かけて研究するテーマが解決するまで、他のテーマは研究できない、というのでは、お給料がいただけません。
それらすべてを含めて、入学試験では試されています。
そのようなことも考え合わせ、ふだんの勉強のときと、テスト中とで、自分のメンタリティーをコントロールしていく必要があります。
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