日能研の開塾は1953年(昭和28年)。神奈川県横浜市の菊名(新幹線・新横浜駅の近く)で、始まりました。
(株式会社日能研の設立は1973年)
開塾当時、まだ、中学受験制度は、世の中に十分知られていませんでした。
「経済白書」が「もはや戦後ではない」と宣言したのが、1956年(昭和31年)。
この時期、日能研は、私立中学といっしょに、中学受験を広め始めます。
講師は、小学校の先生方が多かったと聞きます。
中学受験を広めるにあたり、目標に掲げたのが、神奈川きっての名門、「栄光学園」。
これらの沿革が、日能研の遺伝子に深く刻み込まれ、現在でも、算数のカリキュラム、解法に、影響しています。
中学受験で、昔から頻出だった、「平面図形」「速さ」の2分野で、日能研のテキストは、非常に良くできています。
ただ、中学受験界の新たな傾向では、対策が、やや後手に回った感があります。
たとえば、方程式(倍数算)
伝統を重視する栄光学園は、中学入試問題を方程式で解くことに、現在でも否定的です。
方程式による機械的な解法では、真の思考力があるかどうかが、判定できない、というのが、その理由です。
そのため、中学受験・算数の「数学化」が急激に進んだ1990年代以降も、日能研は、方程式的な解法には、慎重でした。
小学校で教える「算数」の解法をなるべく尊重しよう、というわけです。
もっとも、スタッフの世代交代が進むにつれ、変化しつつありますが。
同じく、「数学化」の象徴である「立体切断」についても、問題演習の量が十分ではありません。
この点は、難関校受験に特化しているS塾との、大きな違いの一つです。
これらの要因がすべてではありませんが、現状、難関校、超難関校の合格実績において、日能研がS塾に、水をあけられていることは、数字が物語っています。
でも、中堅校以下の合格実績では、日能研も充実しています。
日能研は、私学とともにある
というのが、創業期以来のミッションです。
難関校受験に特化しないで、創業期以来の同志である「すべての私学」を応援する。
ここが、日能研の魅力といえます。
このように、すべての私学を見据えた、全天候型のテキストを使うため、扱う問題の難易度も、幅が広くなっています。
テキスト(本科教室)では、まず、日能研が作成した基本問題で、段階的に理解を深めていきます。
この部分は、非常に良く練られた、すばらしいテキストです。
ところが、錬成問題に入ると一転、難しい入試問題が並びます。(学校名も記載)
つまり、テキストが、全国私学の展示会、博覧会になってしまっています。(テキストの私学フェア化)
教育的配慮からすれば、この問題とこの問題の間には、「創作問題」を入れて、段差をなくすべきでは?と思うところも、別の都合から、関係ない入試問題がはさまれているように、思えるときがあります。
(あくまでも、レッツ算数教室の見方にすぎませんが)
学習力育成テスト(旧カリテ)でも、「基礎」と「応用」で、段差が大きく、クラスが上がって「応用」に取り組み始めた子は、かなり戸惑うようです。
この、非常によく練られた基礎と、やや粗い応用の間をつなぐ勉強をすることが、日能研算数・対策のポイントです。